◆むかし、酒野谷から日向にかけて原っぱがあった。そこには悪い狐がいて、通る人をだましては、みんなつるつるの坊主頭にしてしまった。村人はその原っぱに近寄らなくなってしまった。一人の村人「六さん」がみんなが止めるのも聞かず狐退治にいった。
六さんがやぶに隠れて狐の出てくるのを待っていたところ、狐が出てきて、クルッと回って娘に化けた。娘は石をひろって赤ん坊にした。それを見ていた六さんは、娘のあとをついていった。娘は一軒の家に入って行った。六さんもその家にあとから飛び込んでいき、「その娘は狐だ。だまされんな。」と言った。その家のおばあさんは「わたしの娘と孫だ。」といいはった。六さんは「化けのかわをはがしてやる。」と言い、杉の葉をいろりにくべて、いぶし続けたところ、娘は死んでしまった。
おばあさんは「娘をもとどおり生きかえらせろ。かんべんできねえ。」と言い続けたので、六さんも困ってしまった。そんなところへお寺の和尚さんがきたので、いきさつをはなしたところ、和尚さんは「坊さんになって娘をとむらったらどうだ。」と言い、六さんの髪を剃った。
六さんは朝になって村人に声かけられて、顔を上げてみると、そこには家もおばあさんも娘もいない村はずれの原っぱだった。・・・という話です。 |