道祖神について
道祖神は古い時代に道の辻や村境に祀られ(まつられ)てあったものが、そのまま現代に遺されているということで、貴重な文化遺産のひとつです。
村に侵入してくる悪霊や災害をそこでさえぎって、村の平和と幸福を守る神というところから古くは「塞神(さえのかみ)」とよばれておりました。
近来の私たちのこの地方では「どうろく神(じん)」という呼名がもっとも一般的です。
しかし、その姿・形は一様でなく、文字のみの「石碑形」、男根をかたどった「陽物形」神像として刻まれたものも、「単体道祖神」と「双体道祖神」とがあり、双体道祖神は男女二神の形となっております。
そしてさらにその形は酒瓢(しゅひょう)と盃を持ち肩を抱き合う「祝儀形」、肩を抱いて手を握り合う「握手形」たがいに向き合って双手で抱き合う「歓喜天形」などに分けられます。
この粟野町の中粕尾から上粕尾にかけての地区は、この諸形のうち、もっとも品格を備え趣きのあるといわれる「双体道祖神」が、県内随一といわれるほど数多くみられます。
まさに、「双体道祖神」の宝庫といってもいいくらいの民俗学的にも貴重な地域なのです。
さて、この神は、道路安全・村内安全の信仰から、男女良縁の神、妊娠・出産・幼児保護の神にまで、時代ともに発展して信仰されてきましたが、そうした信仰の立場から詣でるのとは別に、美術品として鑑賞しても、男女仲むつまじいその姿と、素朴で稚拙(ちせつ)な手法のもつ独特な暖かみは土の香りのする野の仏と比較してみても、さらに身近な親しみを感じさせるものがあります。
一種の民芸調とでもいうべき味わいをもち、じっとみていると祖先たちのおおらかな愛の心が伝わってくるような気もいたします。
自然のふところのなかでじっくりとご覧になってください。 |