■説明板・・・
●西鬼怒川桜堤の名桜由来
ここ上河内町・西鬼怒川桜堤の樹齢100年余の名桜は、明治年間、この堤が町の人びとの手で築かれたおり、東京都足立区江東の荒川堤の名品の桜の苗木を移し植えた「御車返」「松月」「関山」「奈良八重」などです。これらの桜は江戸の桜文化が作り出した世界に類のない名品で、それらの名品の四散を惜しんで荒川堤に移植されたものでした。この中には名高い江戸青山の長者丸桜園の桜もこの中に入っていました。アメリカの首都ワシントンのポトマック河畔の桜も荒川堤の桜の苗木を贈ったものですから、この西鬼怒川堤の桜とは姉妹の桜です。桜は美しい女性の化身であり、また、泰平と豊穣を予兆する聖なる樹であると古代の歴史書にも語られています。荒川堤の名桜は今世紀のなかばに滅びてしまいましたが、この西鬼怒川の桜堤の名品はふるさと上河内の豊かで優しい風土に護られて百年の齢を保ち、春毎に美しく咲き匂い、荒川堤に代わって、その面影を唯一ここに遺している貴重な名桜なのです。(国文学者・評論家 小川和佑)
宇都宮市 |