鹿沼市は宇都宮市の西側にある、人口94,000人余りの市です。古くは、日光例幣使街道の宿場町として栄えました。市の中心部を黒川が流れ、初夏には鮎釣りができます。僕は、30年近く前に、鹿沼で働いていたので、県内でも思い出の深い街です。
鹿沼市は、盆栽に使う鹿沼土の産地として知られています。鹿沼土は、園芸店などで販売されている、黄褐色、乾くと黄白色となる土です。群馬県の赤城山中央火口の約3万年前の噴出物で、 栃木県から茨城県まで、扇状に堆積した火山軽石です。特に、鹿沼市及びその周辺では地下2〜3mの所に2m程の厚さで分布しています。この鹿沼土は、保水率が高く、さらに火成岩であるために雑菌がないばかりでなく、pHが6から6.5という酸性土壌です。この土が、サツキの栽培に最適であったことから、全国的にも有名になりました。
サツキはツツジの仲間で、水分を好み、また根が非常に細かく酸素不足になりやすいので土壌に空隙が必要で、更に根が密生して根腐れを起こしやすいため清潔な土壌が必要で、酸性土壌を好むという性質を持っていることから、サツキの培養土としては最適なのだそうです。この鹿沼土が、サツキ向けに使われ出したのは、それほど古い事ではなく、大正時代からのようです。
鹿沼土が利用されるようになると、当然のことながら、鹿沼でもサツキの栽培を始める方が多くなり、今では、鹿沼市はサツキの街としても有名になっています。毎年、5月末頃サツキ祭りが開かれ、全国各地からサツキの愛好家が鹿沼市を訪れます。鹿沼市では、サツキ祭りに併せて、花火大会やマラソン大会などのイベントを開催し、雰囲気を盛り上げたり、新しくできた道に「さつきロード」と名称を付けたりして、サツキをテーマにしたまちづくりを進めています。
鹿沼市には、川上澄生美術館があります。宇都宮中学の英語の教師だった川上澄生さんは、版画家としても多くの作品を残しました。その代表作「初夏の風」を見て、棟方志功は、絵画から版画に転進したそうです。川上さんの作品を集めた美術館は、街の中心を流れる黒川の畔にあり、版画の中から抜け出したような可愛らしい建物です。 更に、古くから多くの人々の信仰を集めている古峰ヶ原神社が、市の西側の山中にあります。鹿沼市は、色々な要素のある、面白い街だと思います。